広域生涯看護学領域は、公衆衛生看護、在宅看護、老年看護、母性看護、助産、小児看護の6つの専門ユニットで構成されています。人が生まれる前から亡くなるまでの生涯を通じた看護ケアを医療機関や地域の様々な場で提供し、個人・家族、集団、組織を対象とした健康支援技術やシステムの構築、女性のライフステージを通じた性や生殖に関わる教育・研究を行っております。
また、当領域では、学部での保健師コース(3年次からの選択コース)と修士課程での助産学コースの教育も担い、保健師や助産師の育成もしています。
疋田直子
2024年4月1日
公衆衛生看護とは、地域で生活するすべての人を対象とし、病気の予防や健康問題へ対処する活動を通じて地域の人々の生活の質の向上に寄与することを目的とする、保健師の看護活動のことです。保健師は家庭訪問や健康教育、地域の住民組織への支援等の直接的な看護サービスを提供するとともに、住民が健康的な生活を送りやすくなるような環境の整備や施策の策定に働きかけています。公衆衛生看護領域は、このような保健師の活動に関わる教育・研究を行っています。
在宅看護では、生活の場で療養する人やその家族、そして彼らをとりまく地域の人々を対象に、健康の保持増進に努めながら、その人らしくいきいきと暮らしていけるような看護を提供することに関して教育・研究などを行っています。近年、ますます伸展する高齢化、核家族化の中、在宅で療養しながら生活する人々の支援は、家族だけでなく、社会的にも大きな課題となっています。施設医療から在宅医療への移行が推進されている現在、在宅看護には、多くの社会的課題解決に向けた早急な教育・研究などの推進が期待されています。
老年看護では、高齢者の心身の特性や生活を理解し、人生の統合に向けた支援について思考を深めます。また、医療機関内にとどまらず、様々な場で暮らす高齢者が、要介護状態になっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けられるよう、過不足のない、また途切れることのない看護を提供し、支援する方法について教育・研究を行います。
母性看護学は、ライフサイクルの視点から女性の生涯を通じたReproductive Health(性と生殖に関する健康)に関連した健康問題や家族を含めた発達課題を支援する看護領域です。さらに、不妊症の増加による生殖補助医療の進歩、生命倫理などに関して「性」と「生」についても幅広く理解を深めます。特に思春期の女性の成熟期に向かう過程の支援としての性教育、妊娠期から産後の母児のケアと育児支援、さらに更年期以降の保健指導等、ウェルネスを高めるための看護ケア・理論について学習・研究します。
助産領域では、多様化する社会の要請、医療技術の進歩に対応して、対象を全人的に理解し、助産を科学的、創造的、自律的に実践するための基礎的な知識・技術・ 態度と科学的な知識の普及およびその発展のために必要な教育および研究を行っています。助産師は女性の妊娠、出産、産褥の各期と、女性の生涯の健康支援、サポート、ケア及び助言を行い、また、新生児及び乳児の心身の発達に対するケア提供のため、女性とパートナーシップをもって活動します。講義・演習・実習を通してリプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利)の視点から母子および家族の健康支援や助産師の役割、課題や展望について理解や考察を深めます。
小児看護領域は、様ざまな状況にある子どもと家族を対象にした看護領域です。健康な子どもや健康障害を持つ子どもの成長・発達、日常生活、家族に与える影響を総合的に理解したうえで、個別性を活かした健康上のニーズの対応およびQOLの維持向上を目指した看護を考えていきます。また、現代の子どもと家族を取り巻く社会環境を踏まえ、小児保健医療の動向を分析し、小児看護の今日的課題について敎育・研究を行います。